泣き笑い


緑の渦巻き♪

第2回 きっと、一生の後悔(1996.菊花賞)


私の基本的なスタンスは、「やらないで後悔するよりも、やって後悔した方がいい」である。競馬においても、それは変わらない。心に決めた馬が出ていれば泣きながらでも押さえるし(必ず軸、と言う訳には行かないけど) 大好きな馬が中京に来ようものなら、殆どすべてを投げ出して見に行ってしまうだろう。行動範囲はあまり広い方ではないが、行けるところへは、行く。行かないと後悔するかも知れないから。殊に競馬は、 一期一会という言葉がぴったりとあてはまったりするのだ。
今回は、それを痛感したときの話。

私は甘ちゃんのファンなので、競馬場通いの理由に馬券の要素はあんまりなかったりする(^_^;) 欲はあるから買った馬券が当たればもちろん嬉しいが、専ら欲しいのは単勝(笑) 好きな馬の単勝(しかも\100)しか買わない日なんか、ザラにある。 馬に会いに行く、と言う気持ちの方が強いからだろう。
幸いだが、競馬場に出かけて後悔したことは未だ一度もない。そりゃ、馬券的には毎回悔しい思いをしてるけど(いつも「勝つ気」だけはあるんだが)。
此処まで引っ張ればもうお分かり頂けると思うが(笑)「行かなくて」後悔したレースなのだ。あのダンスインザダークが勝った、第57回菊花賞は。

競馬を始めて間もなかった1995年。GTがいくつあって、何処で何が開催されてるのかすら、覚えていない時期だった。競馬が面白くなり始めて、色んな知識を頭に詰め込もうと一生懸命(笑)だったような気がする。 初めて馬券を買ったのもこの年。ジェニュインと言う真っ黒な馬に惚れたのも、ビコーペガサスを追っかけ始めたのも、思い返せばこの年だ。当時は4歳以上の重賞をたどるのに必死で、3歳まで頭が回らなかった。
ようやく3歳に目が行ったときには最早12月。1ヶ月もしたらみんな4歳になってしまうと言う、そんな時だった。 阪神3歳牝馬Sでビワハイジに、朝日杯でバブルガムフェローに一目惚れし(いずれも勝ち馬。まだまだ青いね(笑))、これで憧れのクラシックに予備知識持って行けるかも、と喜びながら有馬に向かう、その前日。
ラジオたんぱ杯で、滅茶苦茶格好いい馬に会ってしまった。しかも2頭。1頭は、私にとって黄門様の印籠に等しい「ウイニングチケット」の半弟。そしてもう1頭が、名前惚れした挙げ句、姿を見てすっかり入れ込んでしまったダンスインザダークだった。

そのレースから皐月賞前までは、あまり記憶がない。考えてみると、クラシックまでのステップを全く知らなかったり(笑) 気づいたときにはダンスは熱発回避。結果は、ロイヤルタッチ2着だった。勝ったのは、何だか知らない馬(ごめん、 イシノサンデー及びファンの方(-_-;) 今は好きよ、イシノサンデー)。 ダービーは、ダンスとロイヤルタッチとハイジの単勝、ダンス−ロイヤルタッチの一点を確か\1,000ずつ買った。結果は・・・(T-T) ハイジと同じカーリアン産駒だというのに、フサイチコンコルドは大っ嫌いになってしまった(^_^;) (再びごめん、フサイチコンコルド及びファンの方。でも、今でも嫌い(^_^;) 彼のせいじゃないのは理性では分かるけどね)
最後の一冠が迫った、10月の終わり頃。突然、京都競馬場へ行く事を思いついた。それまでは地元の中京しか行ったことがなくて、京都競馬場なんて遠いところだと思っていたのに。でも流石に一人で行くのは恐くて(ものすごい方向音痴なのだ(-_-;)) 相棒に同行を頼む。暫く考えてから、相棒はこうのたまった。「エリザベス女王杯にしない?」
相棒はホクトベガの追っかけだ(私も負けず劣らずだけど)。だから、そう言ってくるとだろうは思っていた。「菊がいいの」「ダンス?」「うん」「菊の馬、興味ないからなぁ・・・」と言うことで、あっさり却下。そして私は、 この先もずっと後悔し続けるであろう出来事に遭遇する。

4角で、絶望的な12番手。しかも馬群の中。出られるわけがない。「また負けるのか」そう観念した。カメラは先頭を追う。TV画面から消えたダンスインザダーク。代わりに、あのフサイチコンコルドが映し出される。必死に追いかけるのはロイヤルタッチ。
いきなり外から飛んできた馬が誰っだのか、一瞬分からなかった。杉本さんの声でようやく理解したときには、その馬は先頭の2頭を差し切っていた。
その馬が誰なのかを理解すると、今度は何故来たのかが分からなくなった。間違いなく馬群の中にいたはずだ。後ろの方で揉まれてたじゃないか。

「背筋が凍る」レースを見たのは、これが初めてだった。とにかく凄いレースだった。だから、ダンスがその立て役者だったことを抜きにしても、何故見に行かなかったのかを後悔した。
更に追い打ちをかけるように、ダンスはこのレースを最後に引退してしまう。キャリアは、たったの8戦。私にとって菊花賞が、競馬場でダンスに会う最初で最後のチャンスだった。
後悔してもしきれない、二重に悔しい菊花賞。時が流れるほど、この思いは強くなっていく。

何故か、菊花賞は馬券を買っていない。手元にあるダンスの単勝が、あのダービーのものだけというのも、何だか皮肉だなぁ・・・

1998.3.27.

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